航空機抵当法

航空機抵当法
(昭和二十八年七月二十日法律第六十六号)


最終改正:平成一六年一二月一日法律第一四七号

第一条  この法律は、航空機に関する動産信用の増進により、航空の発達を図ることを目的とする。

第二条  この法律で「航空機」とは、飛行機及び回転翼航空機で航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)第二章 の規定による登録を受けたものをいう。

第三条  航空機は、抵当権の目的とすることができる。

第四条  抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移さないで債務の担保に供した航空機(以下「抵当航空機」という。)につき、他の債権者に先だつて、自己の債権の弁済を受けることができる。

第五条  抵当権の得喪及び変更は、航空法 に規定する航空機登録原簿に国土交通大臣が行う登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。

第六条  抵当権は、抵当航空機に附加して一体となつている物に及ぶ。但し、設定行為に別段の定がある場合及び民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条 の規定により他の債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

第七条  抵当権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、抵当航空機の全部につき、その権利を行使することができる。

第八条  抵当権は、抵当航空機の売却、賃貸、滅失又はき損によつて抵当権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。この場合においては、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。

第九条  他人の債務を担保するため抵当権を設定した者がその債務を弁済し、又は抵当権の実行によつて抵当航空機の所有権を失つたときは、民法 に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。

第十条  数個の債権を担保するため同一の航空機について抵当権を設定したときは、その抵当権の順位は、登録の前後による。
 民法第三百七十四条 の規定は、抵当権の順位の変更について準用する。

第十一条  同一の航空機について抵当権及び先取特権が競合する場合には、抵当権は、民法第三百三十条第一項 に規定する第一順位の先取特権と同順位とする。

第十二条  抵当権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となつた最後の二年分についてのみその抵当権を行使することができる。
 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によつて生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合において、その最後の二年分についても適用する。但し、利息その他の定期金を通算して二年分をこえることができない。

第十三条  抵当権者は、抵当権を他の債権の担保に供し、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のため抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
 前項の場合において、抵当権者が数人のために抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登録にした附記の前後による。

第十四条  前条の処分は、民法第四百六十七条 の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又はその債務者がこれを承諾しなければ、これをもつてその債務者、保証人、抵当権設定者又はこれらの承継人に対抗することができない。
 主たる債務者が前項の通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないで行つた弁済は、これをもつてその者に対抗することができない。

第十五条  抵当航空機を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

第十六条  抵当航空機を取得した第三者が抵当航空機について必要費又は有益費を出したときは、(共同抵当の代価の配当)
第十七条  債権者が同一の債権の担保として数個の航空機の上に抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各航空機の価額に応じてその債権の負担を分ける。
 ある航空機の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価につき債権の全部の弁済を受けることができる。この場合においては、次の順位にある抵当権者は、右の抵当権者が前項の規定により他の航空機につき弁済を受けるべき金額に達するまでこれに代位して抵当権を行うことができる。
 前項後段の規定により代位して抵当権を行う者は、その抵当権の登録にその代位を附記することができる。

第十八条  抵当権者は、抵当航空機の代価で弁済を受けない債権の部分についてのみ他の財産から弁済を受けることができる。
 前項の規定は、抵当航空機の代価に先だつて他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。
 前項の場合において、抵当権者に第一項の規定による弁済を受けさせるため、他の債権者は、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

第十九条  国土交通大臣は、抵当航空機が航空法第八条第一項第三号 に該当することとなつた場合において、同条第一項 の規定によりまつ消登録の申請を受理したとき、又は同条第二項 の催告をした後当該航空機の所有者が同項 の期間内にまつ消登録を申請しないときは、遅滞なく、抵当権者に通知しなければならない。

第二十条  抵当権者は、前条の通知を受けたときは、当該航空機に対して、直ちに、その権利を実行することができる。
 前項の規定により抵当権を実行しようとするときは、抵当権者は、前条の通知を受けた日から三箇月以内に、その手続をしなければならない。
 国土交通大臣は、前項の規定により抵当権の実行の手続をすることができる期間内及び抵当権の実行の終るまでの期間内は、第一項の航空機について航空法 の規定によるまつ消登録をすることができない。
 買受人が代金を納付したときは、第一項の航空機について航空法第八条第一項第三号 の事由が発生しなかつたものとみなす。

第二十一条  抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によつて消滅しない。

第二十二条  債務者又は抵当権設定者以外の者が抵当航空機について取得時効に必要な条件を具備した占有をしたときは、抵当権は、これによつて消滅する。

第二十二条の二  抵当権は、設定行為をもつて定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
 民法第三百九十八条の二第二項 及び第三項 並びに第三百九十八条の三 から第三百九十八条の二十二 までの規定は、前項の抵当権について準用する。

第二十三条  航空機は、質権の目的とすることができない。

行政手続法 の適用除外)
第二十四条  抵当権の登録については、行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第二章 及び第三章 の規定は、適用しない。

第二十五条  航空機登録原簿の記載その他登録に関する事項は、政令で定める。

(新法の適用の制限)
第三条  旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないもの又は附記によらない極度額の増額の登記があるものについては、その極度額の変更、新法第三百九十八条ノ四の規定による担保すべき償権の範囲又は債務者の変更、新法第三百九十八条ノ十二の規定による根抵当権の譲渡、新法第三百九十八条ノ十三の規定による根抵当権の一部譲渡及び新法第三百九十八条ノ十四第一項ただし書の規定による定めは、することができない。
 前項の規定は、同項に規定する旧根抵当権以外の旧根抵当権で、民法第三百七十五条第一項の規定による処分がされているものについて準用する。ただし、極度額の変更及び新法第三百九十八条ノ十二第二項の規定による根抵当権の譲渡をすることは、妨げない。

(極度額についての定めの変更)
第四条  旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないものについては、元本の確定前に限り、その定めを変更して新法の規定に適合するものとすることができる。この場合においては、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

(附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権の分割)
第五条  附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を分割して増額に係る部分を新法の規定による独立の根抵当権とすることができる。この場合においては、旧根抵当権を目的とする権利は、当該増額に係る部分について消滅する。
 前項の規定による分割をする場合には、増額に係る部分を目的とする権利を有する者その他の利害の関係を有する者の承諾を得なければならない。
 附則第十四条の規定による改正後の不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第百十七条第二項、第百十八条及び第百十九条の規定は、第一項の規定による分割による権利の変更の登記の申請について準用する。
 前項の登記は、増額の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、分割により根抵当権の設定を登記する旨を記載し、かつ、分割前の旧根抵当権の登記に分割後の極度額を附記しなければならない。
 不動産登記法第百四十七条第二項の規定は、前項の場合において、増額の登記に当該増額に係る部分を目的とする第三者の権利に関する登記があるときに準用する。

(元本の確定すべき期日に関する経過措置)
第六条  この法律の施行の際旧根抵当権について現に存する担保すべき元本の確定すべき時期に関する定め又はその登記は、その定めにより元本が確定することとなる日をもつて新法第三百九十八条ノ六第一項の期日とする定め又はその登記とみなす。ただし、その定めにより元本が確定することとなる日がこの法律の施行の日から起算して五年を経過する日より後であるときは、当該定め又はその登記は、当該五年を経過する日をもつて同項の期日とする定め又はその登記とみなす。

(弁済による代位に関する経過措置)
第七条  この法律の施行前から引き続き旧根抵当権の担保すべき債務を弁済するについて正当な利益を有していた者が、この法律の施行後元本の確定前にその債務を弁済した場合における代位に関しては、なお従前の例による。

(旧根抵当権の処分に関する経過措置)
産の間に、民法第三百九十二条の規定の適用がないものとすることができる。ただし、後順位の抵当権者その他の利害の関係を有する者の承諾がないときは、この限りでない。
 前項の規定による分離による権利の変更の登記は、当該一の不動産の上の旧根抵当権の設定の登記に附記してする。この場合においては、登記官は、当該不動産が他の不動産とともに担保の目的である旨の記載を朱抹しなければならない。
 不動産登記法第百二十八条の規定は、前項の権利の変更の登記をした場合について準用する。
 第一項の規定による分離は、新法第三百九十八条ノ十六の規定の適用に関しては、根抵当権の設定とみなす。

(元本の確定の時期に関する経過措置)
第十条  この法律の施行前に、新法第三百九十八条ノ二十第一項第二号に規定する申立て、同項第三号に規定する差押え、同項第四号に規定する競売手続の開始若しくは差押え又は同項第五号に規定する破産の宣告があつた旧根抵当権で、担保すべき元本が確定していないものについては、この法律の施行の日にこれらの事由が生じたものとみなして、同項の規定を適用する。

(旧根抵当権の消滅請求に関する経過措置)
第十一条  極度額についての定めが新法の規定に適合していない旧根抵当権については、その優先権の限度額を極度額とみなして、新法第三百九十八条ノ二十二の規定を適用する。

(航空機抵当法の一部改正に伴う経過措置)
第二十五条  前条の規定による航空機抵当法の一部改正に伴う経過措置については、附則第二条から附則第十一条までの規定の例による。

   
附 則 (昭和五四年三月三〇日法律第五号) 抄

(施行期日)
 この法律は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
(経過措置)
 この法律の施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。
 前項の事件に関し執行官が受ける手数料及び支払又は償還を受ける費用の額については、同項の規定にかかわらず、最高裁判所規則の定めるところによる。

   附 則 (平成五年一一月一二日法律第八九号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)の施行の日から施行する。

(諮問等がされた不利益処分に関する経過措置)
第二条  この法律の施行前に法令に基づき審議会その他の合議制の機関に対し行政手続法第十三条に規定する聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続に相当する手続を執るべきことの諮問その他の求めがされた場合においては、当該諮問その他の求めに係る不利益処分の手続に関しては、この法律による改正後の関係法律の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(罰則に関する経過措置)
第十三条  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(聴聞に関する規定の整理に伴う経過措置)
第十四条  この法律の施行前に法律の規定により行われた聴聞、聴問若しくは聴聞会(不利益処分に係るものを除く。)又はこれらのための手続は、この法律による改正後の関係法律の相当規定により行われたものとみなす。

(政令への委任)
第十五条  附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。

   附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。

   附 則 (平成一六年一二月一日法律第一四七号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。