漁船乗組員給与保険法

漁船乗組員給与保険法
(昭和二十七年六月二十五日法律第二百十二号)


最終改正:平成二〇年六月六日法律第五七号

   第一章 総則

第一条  この法律は、当分の間、保険の方法によつて、漁船の乗組員が抑留された場合における給与の支払を保障し、もつて、漁船の乗組員の生産意欲を保持し、あわせて、漁業経営の安定に資することを目的とする。

第二条  漁船乗組員給与保険は、漁船損害等補償法 (昭和二十七年法律第二十八号)の規定による漁船保険組合が行う漁船乗組員給与保険事業及び政府が行う再保険事業により行う。

第三条  この法律において「漁船乗組員給与保険」(以下「給与保険」という。)とは、乗組員が抑留された場合に、その抑留期間中事業主が当該乗組員に対して支払うべき給与の全部又は一部に代えて保険金を支給するために行う保険をいう。
 この法律において「乗組員」とは、事業主に雇傭されて、漁船(漁船法 (昭和二十五年法律第百七十八号)  この法律において「抑留」とは、乗組員が自己の意思に反して日本国の領土外に連行留置されることをいう。

   第二章 漁船乗組員給与保険事業

第四条  漁船保険組合(以下「組合」という。)は、総会又は総代会(以下「総会」という。)の議決を経て、この法律の定めるところにより、その区域内に住所又は事業所を有する事業主につき、漁船乗組員給与保険事業(以下「給与保険事業」という。)を行うことができる。
 組合は、前項の規定により給与保険事業を行おうとするときは、総会の議決を経て、農林水産省令の定めるところにより、定款にその旨を記載し、且つ、給与保険事業に関する約款を定め、農林水産大臣の認可を受けなければならない。

第五条  事業主は、給与保険に加入しようとするときは、左に掲げる事項その他農林水産省令で定める事項を記載した申込書を組合に提出しなければならない。
 契約金額(当該契約に係る乗組員の全員が抑留された場合に組合が支払うべき一箇月分の保険金の額をいう。以下同じ。)
 漁船名並びにその乗組員の氏名及び職名
 契約金額に基き組合が支払うべき一箇月分の保険金の各乗組員についての内訳(以下「内訳保険金額」という。)
 保険金受取人の氏名又は名称及び住所
 各乗組員の給与月額
 前項の規定による給与保険加入の申込は、漁船ごとに、当該乗組員の全員についてしなければならない。

第六条  契約金額は、各乗組員の給与月額の合計額をこえ、又はその百分の六十を下るものであつてはならない。
 契約金額は、保険契約が成立した後においては、変更することができない。

第七条  内訳保険金額は、各乗組員の給与月額の合計額で契約金額を除して得た数を、各乗組員の給与月額に乗じて、算出する。

第八条  給与月額は、事業主が当該乗組員に対し、雇傭契約に基き抑留期間中において支払うべき一箇月分の給与の額とする。
 事業主は、給与月額を定める場合には、当該乗組員の同意を得なければならない。

第九条  事業主は、第五条第一項第四号の保険金受取人を定める場合は、各乗組員の指定に従つてしなければならない。

第十条  組合は、事業主から給与保険契約の申込があつたときは、これに対して、正当な事由がなければ給与保険の引受を拒むことができない。

第十一条  乗組員は、漁船ごとに、当該漁船の乗組員の総数の二分の一以上の者の連署をもつて、その代表者から、その事業主に対し、給与保険に加入すべき旨の申出をすることができる。
 前項の申出があつたときは、事業主は、正当な事由がある場合の外、遅滞なく当該漁船の乗組員に係る給与保険に加入しなければならない。

第十二条  給与保険契約は、事業主が第五条に規定する申込書を組合に提出して申し込み、組合がこれを承諾することによつて成立する。
 組合との間に給与保険契約が成立した事業主は、当該保険契約に係る保険期間の開始日の前日までに、組合に保険料を支払わなければならない。
 前項の規定による保険料の支払をその支払期限までにしないときは、当該保険契約は、その効力を失う。

第十三条  給与保険契約が成立したときは、事業主は、遅滞なく当該乗組員にその旨を通知しなければならない。当該保険契約の内容につき変更があつたときも、同様とする。

第十四条  給与保険の保険期間は、四箇月とする。但し、組合は、農林水産省令の定めるところにより、約款で別段の定をすることができる。

第十五条  事業主は、給与保険契約が成立した後において、乗組員の異動等により第五条第一項の申込書に記載した事項について変更があつたときは、遅滞なく、農林水産省令の定めるところにより、組合に変更の通知をしなければならない。この場合において、契約金額が乗組員の給与月額の合計額をこえることとなるときは、第七条の規定にかかわらず、内訳保険金額は、当該乗組員の給与月額に相当する額とし、契約金額が乗組員の給与月額の合計額の百分の六十を下ることとなるときは、第六条第二項の規定にかかわらず、契約金額を乗組員の給与月額の合計額の百分の六十を下らないように増額しなければならない。
 前項後段の場合においては、事業主は、農林水産省令の定めるところにより、当該増額分に対する保険料を支払わなければならない。
 組合が第一項の通知を受領したとき(同項後段の場合にあつては前項の規定による保険料の支払があつたとき)は、その時において給与保険契約は当該事項につき変更があつたものとみなす。

第十六条  事業主は、乗組員が抑留されたときは、約款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。当該乗組員につき抑留が終つたときも、同様とする。

第十七条  組合は、乗組員が抑留された場合には、当該乗組員が抑留された日の属する月から当該乗組員につき抑留が終つた日の属する月まで、当該乗組員に係る保険金を支払う。但し、抑留された日から起算して六年四箇月を経過しても抑留が終らない場合においては、当該期間を経過した日の属する月の翌月以後は、保険金を支払わないものとする。
 前項の規定の適用については、乗組員が、たい捕された時に、抑留が始まつたものとし、抑留を解かれて日本国に上陸した時、又は抑留中に死亡したことが判明した時に、抑留が終つたものとする。

第十八条  給与保険契約は、当該契約に係る乗組員につき、前条の規定により組合が保険金を支払うべき最初の抑留があつたとき(同一航海において数回の抑留があつた場合は、その最後の抑留があつ支払つたときは、その旨を事業主に通知しなければならない。

第二十条  組合は、乗組員についての抑留が、国際法規、法令又は法令に基く命令に違反して航行し又は操業したために生じたときは、保険金支払の責を免かれることができる。

第二十一条  組合は、事業主が、第十六条の規定による通知をしなかつたため又は虚偽の通知をしたために誤つて保険金を支払つた場合には、当該事業主に、当該誤払に係る保険金の額に相当する金額を納付させることができる。
 前項の場合における誤払に係る保険金については、事業主がその金額に相当する額の給与を当該組合員に支払つたものとする。

第二十二条  事業主は、乗組員につき、重ねて給与保険に加入することができない。

第二十三条  組合の給与保険に関する会計は、他の会計と区分して経理しなければならない。但し、附加保険料及び事務費についてはこの限りでない。
 給与保険の事業年度は、四月一日から翌年三月三十一日までとする。

第二十四条  組合は、毎事業年度の終において存する給与保険につき、農林水産省令の定めるところにより、支払備金及び責任準備金を積み立てなければならない。

第二十五条  組合は、給与保険の会計における不足金の補てんに備えるため、毎事業年度、給与保険の会計において生じた剰余金の全部を準備金として積み立てなければならない。

第二十六条  組合は、総会の議決を経て、約款を変更することができる。
 約款の変更は、農林水産大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
 農林水産大臣は、給与保険の保険料率についての約款の変更を命ずることができる。
令により、約款変更の効力を生ずるものとする。

第二十七条  組合が給与保険事業を廃止しようとするときは、総会においてその旨を議決し、且つ、定款の変更を行わなければならない。
 組合が給与保険事業を廃止したときは、当該事業の廃止に係る定款変更の認可があつたときに、給与保険契約は、その効力を失う。
 前項の場合には、組合は、まだ経過しない期間に対する保険料を払いもどさなければならない。
 組合が給与保険事業を廃止したときは、理事は、遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。

第二十八条  組合が解散したときは、合併の場合を除いては、給与保険契約は、その効力を失う。
 前項の場合には、前条第三項の規定を準用する。

第二十九条  組合は、前二条の場合に、給与保険の会計において生じた剰余金を漁船再保険及び漁業共済保険特別会計に納付しなければならない。

第三十条  政府は、予算の範囲内において政令の定めるところにより、毎会計年度、組合の給与保険事業につき、その事務費の一部を補助することができる。

第三十一条  組合の給与保険については、漁船損害等補償法第十二条 (非課税)、第九十二条(保険料の相殺の制限)、第九十三条(保険証券の交付及び記載事項)及び第百五条(保険金の削減)並びに保険法 (平成二十年法律第五十六号)第四条 、第二十八条、第三十一条第一項及び第二項(第一号に係る部分に限る。)、第三十二条(第一号に係る部分に限る。)並びに第九十五条(告知義務等)の規定を準用する。この場合において、漁船損害等補償法第十二条 中「漁船損害等補償に関する書類(漁船乗組船主保険事業及び漁船乗組船主保険再保険事業に関する書類を除く。)」とあるのは「漁船乗組員給与保険に関する書類」と、同法第九十三条第一項 中「組合員」とあるのは「事業主」と、同法第百五条第一項 中「定款」とあるのは「約款」と、同条第二項 中「政府又は漁船保険中央会」とあるのは「政府」と読み替えるものとする。

   第三章 政府の再保険事業

第三十二条  政府は、組合が給与保険事業によつて事業主に負う保険責任を再保険するものとする。

第三十二条の二  再保険料率は、組合の約款で定められた保険料率のうち純保険料に対応する部分の率と同率とする。

第三十三条  政府は、組合が保険金の支払をしようとする場合において、必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、当該保険責任に係る再保険金を当該組合に前渡することができる。
 政府は、再保険金の支出を円滑にするために、政令の定めるところにより、漁船再保険及び漁業共済保険特別会計に基金を設けることができる。

第三十四条  政府は、組合が第二十七条第三項(第二十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により保険料の払もどしをしたときは、政令の定めるところにより、再保険料の一部を払いもどさなければならない。

第三十五条  政府の再保険については、漁船損害等補償法第百三十八条の八 から第百三十八条の十 (第二号を除く。)まで(普通保険再保険事業等)、第百三十八条の十三第一項、第百三十八条の十四第一項及び第百四十三条(特殊保険再保険事業等に関する事務費の繰入れ)並びに保険法第九十五条 (消滅時効)の規定を準用する。この場合において、漁船損害等補償法第百三十八条の八 中「普通保険、漁船船主責任保険、漁船乗組船主保険又は漁船積荷保険の保険関係」とあるのは「事業主との間に保険関係」と、「再保険約款」とあるのは「農林水産省令」と、「中央会」とあるのは「農林水産大臣」と、第四章 雑則

第三十六条  事業主は、第十七条の規定により組合が保険金を支払うべき抑留があつた場合において、当該乗組員に対する給与の全部又は一部を支払つて、その支払つた金額の範囲内において当該保険金に係る保険金受取人となることができる。この場合においては、第十五条第一項前段の規定を準用する。

第三十七条  組合が第十九条第一項の規定により保険金を支払つたときは、事業主は、その保険金の額に相当する金額につき、当該乗組員に対する給与支払の責を免れる。

第三十八条  組合が第十九条第一項の規定により支払つた保険金(第三十六条の規定により事業主に支払つた保険金を除く。)は、所得税法 (昭和四十年法律第三十三号)の規定の適用については、当該乗組員の受ける給与とみなす。
 船員保険に係る保険料その他法令に基いて給与から控除することができるものについては、農林水産省令の定めるところにより、第十九条第一項の規定により支払う保険金から控除することができる。

第三十九条  事業主は、給与保険に係る保険料を乗組員に負担させてはならない。

第四十条  この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、農林水産省令で定める。

   第五章 罰則

第四十一条  左の場合には、事業主を一万円以下の過料に処する。
 第八条第二項の規定に違反したとき。
 第十五条第一項の規定に違反したとき。
 第十六条の規定に違反したとき。
 第二十二条の規定に違反したとき。
 第三十九条の規定に違反したとき。

第四十二条  組合の役員が、第二十四条又は第二十五条の規定に違反したときは、一万円以下の過料に処する。

   附 則 抄

 この法律施行の期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
 この法律の規定の適用に関しては、漁船損害補償法施行法(昭和二十七年法律第二十九号)第二条第一項の漁船保険組合は、漁船損害補償法の規定による組合とみなす。

   附 則 (昭和二七年一二月一八日法律第三一五号)

 この法律は、公布の日から施行する。


   附 則 (昭和二八年八月一日法律第一四六号) 抄

 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 (昭和三五年三月三一日法律第一五号) 抄

 この法律は、昭和三十五年四月一日から施行する。

   附 則 (昭和四〇年三月三一日法律第三六号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、昭和四十年四月一日から施行する。

(その他の法令の一部改正に伴う経過規定の原則)
第五条  第二章の規定による改正後の法令の規定は、別段の定めがあるものを除き、昭和四十年分以後の所得税又はこれらの法令の規定に規定する法人の施行日以後に終了する事業年度分の法人税について適用し、昭和三十九年分以前の所得税又は当該法人の同日前に終了した事業年度分の法人税については、なお従前の例による。

(政令への委任)
第十五条  附則第一条から前条までに定改正規定、第六十九条の三の次に一条を加える改正規定、第七十条第一項及び第三項の改正規定、同条を第七十一条とする改正規定並びに第七十二条を削り、第七十一条を第七十二条とする改正規定 昭和五十四年一月一日
 第十八条の八、第二十二条第二項及び第二十二条の三第二項の改正規定、第七十八条第六号を削る改正規定、第八十条第一号及び第八十一条の改正規定、第八十二条第二項の表の改正規定(淡水区水産研究所の項を削る部分に限る。)、第八十三条の改正規定、同条の次に一条を加える改正規定並びに第八十七条の改正規定 昭和五十四年三月三十一日までの間において、各規定につき、政令で定める日
 第十八条第三項、第十八条の三第二項及び第二十一条第二項の改正規定 昭和五十五年三月三十一日までの間において、各規定につき、政令で定める日

   附 則 (昭和五六年五月一日法律第三一号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、昭和五十六年十月一日から施行する。

   附 則 (昭和五八年四月二六日法律第二四号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、昭和五十八年十月一日から施行する。ただし、次条、附則第三条及び附則第五条第一項の規定は、公布の日から施行する。

(漁船積荷保険臨時措置法の失効)
第二条  漁船積荷保険臨時措置法(昭和四十八年法律第五十六号。以下「臨時措置法」という。)は、昭和五十八年九月三十日限り、その効力を失う。

   附 則 (平成一一年五月二一日法律第四六号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、平成十一年十月一日から施行する。

   附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。

   附 則 (平成一九年三月三一日法律第二三号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、平成十九年四月一日から施行し、平成十九年度の予算から適用する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行し、第二条第一項第四号、第十六号及び第十七号、第二章第四節、第十六節及び第十七節並びに附則第四十九条から第六十五条までの規定は、平成二十年度の予算から適用する。

(罰則に関する経過措置)
第三百九十一条  この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(その他の経過措置の政令への委任)
第三百九十二条  附則第二条から第六十五条まで、第六十七条から第二百五十九条まで及び第三百八十二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要となる経過措置は、政令で定める。

   附 則 (平成二〇年六月六日法律第五七号)

 この法律は、保険法の施行の日から施行する。