社会保障制度改革推進法

社会保障制度改革推進法
(平成二十四年八月二十二日法律第六十四号)



 第一章 総則(第一条―第四条)
 第二章 社会保障制度改革の基本方針(第五条―第八条)
 第三章 社会保障制度改革国民会議(第九条―第十五条)
 附則

   第一章 総則

第一条  この法律は、近年の急速な少子高齢化の進展等による社会保障給付に要する費用の増大及び生産年齢人口の減少に伴い、社会保険料に係る国民の負担が増大するとともに、国及び地方公共団体の財政状況が社会保障制度に係る負担の増大により悪化していること等に鑑み、所得税法 等の一部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条 の規定の趣旨を踏まえて安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、社会保障制度改革について、その基本的な考え方その他の基本となる事項を定めるとともに、社会保障制度改革国民会議を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進することを目的とする。

第二条  社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。
 社会保障の機能の充実と給付の重点化及び制度の運営の効率化とを同時に行い、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現すること。
 年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とすること。
 国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること。

第三条  国は、前条の基本的な考え方にのっとり、社会保障制度改革に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

第四条  政府は、次章に定める基本方針に基づき、社会保障制度改革を行うものとし、このために必要な法制上の措置については、この法律の施行後一年以内に、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議における審議の結果等を踏まえて講ずるものとする。

   第二章 社会保障制度改革の基本方針

第五条  政府は、公的年金制度については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする。
 今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。
 年金記録の管理の不備に起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を行うこと。

第六条  政府は、高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる中で、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)、国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)その他の法律に基づく医療保険制度(以下単に「医療保険制度」という。)に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持するとともに、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとする。
 医療保険制度については、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること。
 医療の在り方については、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境を整備すること。
 今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、第九条に規定する社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得ること。

第七条  政府は、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、低所得者をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保するものとする。

第八条  政府は、急速な少子高齢化の進展の下で、社会保障制度を持続させていくためには、社会保障制度の基盤を維持するための少子化対策を総合的かつ着実に実施していく必要があることに鑑み、単に子ども及び子どもの保護者に対する支援にとどまらず、就労、結婚、出産、育児等の各段階に応じた支援を幅広く行い、子育てに伴う喜びを実感できる社会を実現するため、待機児童(保育所における保育を行うことの申込みを行った保護者の当該申込みに係る児童であって保育所における保育が行われていないものをいう。)に関する問題を解消するための即効性のある施策等の推進に向けて、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

   第三章 社会保障制度改革国民会議

第九条
 会長は、国民会議の会務を総理する。
 委員は、非常勤とする。

第十一条  国の関係行政機関の長は、国民会議の求めに応じて、資料の提出、意見の陳述又は説明をしなければならない。

第十二条  国民会議に、その事務を処理させるため、事務局を置く。
 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
 事務局長は、会長の命を受け、局務を掌理する。

第十三条  国民会議は、この法律の施行の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日まで置かれるものとする。

第十四条  国民会議に係る事項については、内閣法 (昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

第十五条  この法律に定めるもののほか、国民会議に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から施行する。

(生活保護制度の見直し)
第二条  政府は、生活保護制度に関し、次に掲げる措置その他必要な見直しを行うものとする。
 不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと。
 生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総合的に取り組み、保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図るとともに、就労が困難でない者に関し、就労が困難な者とは別途の支援策の構築、正当な理由なく就労しない場合に厳格に対処する措置等を検討すること。