東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法

東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法
(平成二十三年十月七日法律第百十二号)



 第一章 目的及び設置(第一条)
 第二章 組織等(第二条―第九条)
 第三章 事故調査等(第十条―第十七条)
 第四章 財政措置等(第十八条)
 附則

   第一章 目的及び設置

第一条  平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故の直接又は間接の原因及び当該事故に伴い発生した被害の直接又は間接の原因並びに関係行政機関その他関係者が当該事故に対し講じた措置及び当該被害の軽減のために講じた措置の内容、当該措置が講じられるまでの経緯並びに当該措置の効果を究明し、又は検証するための調査並びにこれまでの原子力に関する政策の決定又は了解及びその経緯その他の事項についての調査を適確に行うとともに、これらの調査の結果に基づき、原子力に関する基本的な政策及び当該政策に関する事項を所掌する行政組織の在り方の見直しを含む原子力発電所の事故の防止及び原子力発電所の事故に伴い発生する被害の軽減のため講ずべき施策又は措置について提言を行い、もって国会による原子力に関する立法及び行政の監視に関する機能の充実強化に資するため、国会に、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会を置く。

   第二章 組織等

第二条  東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(以下「委員会」という。)は、委員長及び委員九人をもって組織する。
 委員長及び委員は、非常勤とする。
 委員長は、委員会の事務を統理し、委員会を代表する。
 委員長は、委員会の議決を経て、かつ、事前に、時宜によっては事後に、両議院の議長の承認を得て、委員会の業務の遂行上必要な諸規程を定めることができる。
 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代行する。

第三条  委員長及び委員は、委員会の職務の遂行に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、国会法 (昭和二十二年法律第七十九号)附則第六項 に規定する東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会(以下「両院合同協議会」という。)の推薦に基づき、両議院の議長が、両議院の承認を得て、これを任命する。

第四条  委員長及び委員は、心身の故障のため職務の遂行ができないこと又は職務の執行上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があったことについて両議院の議決があったときを除いては、罷免されることはない。

第五条  委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治活動をしてはならない。
 委員長及び委員は、他の官職を兼ね、又は公選による公職の候補者となり、若しくは公選による公職と兼ねてはならない。

第六条  委員長及び委員は、利害関係者(原子力損害の賠償に関する法律 (昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第三項 に規定する原子力事業者(以下「原子力事業者」という。)及び原子力事業者の利益のためにする行為を行う場合における役員、従業員、代理人その他の者、国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第二項 に規定する一般職に属する国家公務員及び同条第三項 に規定する特別職の職員のうち両議院の議長が協議して定める者その他両議院の議長が協議して定める者をいう。以下同じ。)に関し、次に掲げる行為を行ったときは、各月ごとに、利害関係者の名称又は氏名、当該行為の概要、当該行為を行った年月日その他両議院の議長が協議して定める事項を記載した報告書を、当該月の翌月の初日から七日以内に、両議院の議長に提出しなければならない。ただし、私的な関係(委員長又は委員としての身分に関わらない関係をいう。以下同じ。)がある者であって、利害関係者に該当するものとの間においては、職務上の利害関係の状況、私的な関係の経緯及び現在の状況並びにその行おうとする行為の態様等に鑑み、公正な職務の執行に対する国民の疑惑又は不信を招くおそれがないと認められる場合は、この限りでない。
 利害関係者から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は供応接待を受けること。
 利害関係者から、人的役務に対する報酬の支払を受けること。
 前二号に掲げるもののほか、その職務を遂行する場合以外の場合において、利害関係者と面会、文書の送付その他の方法により接触すること。
 両議院の議長は、前項の報告書を受理したときは、これを公表する措置を講ずるものとする。
 前項に定めるもののほか、第一項の報告書に関し必要な事項は、両議院の議長が協議して定める。

第七条  委員会がこの法律の規定によってその所掌に属させられた事項を決定する場合においては、委員会の議決を経なければならない。
 委員会の会議は、公開することを基本とする。
 委員会は、会議録二部を作成し、委員長及び委員がこれに署名し、各議院に送付する。この場合において、各議院は、送付を受けた会議録を保存する。
 委員会の会議録は、これを印刷して各議院の議員に配付する。ただし、特に秘密を要するものと委員会で決議した部分については、この限りでない。

第八条  委員会に、委員長及び委員に対し、専門的な知識経験に基づく意見を述べさせるため、参与を置くことができる。
 参与は、委員会の意見を聴いて、両議院の議長が任命する。
 参与は、非常勤とする。

第九条  委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
 事務局に、事務局長一人その他所要の職員を置く。
 事務局長その他の職員は、両議院の議長が協議して定めるところにより、両院合同協議会の意見を聴いて、委員長が任命する。
 事務局長その他の職員は、民間の有識者を積極的に登用するものとする。
 事務局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。
 第二項から前項までに定めるもののほか、事務局に関し必要な事項は、両議院の議長が協議して定める。

   第三章 事故調査等

第十条  委員会は、次に掲げる事務を行うものとする。
 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「東京電力福島原子力発電所事故」という。)の直接又は間接の原因を究明するための調査を行うこと。
 東京電力福島原子力発電所事故に伴い発生した被害の直接又は間接の原因を究明するための調査を行うこと。
 関係行政機関その他関係者が東京電力福島原子力発電所事故に対し講じた措置及び東京電力福島原子力発電所事故に伴い発生した被害の軽減のため講じた措置の内容、当該措置が講じられるまでの経緯並びに当該措置の効果を究明し、又は検証するための調査を行うこと。
 これまでの原子力に関する政策の決定又は了解及びその経緯その他の事項についての調査を行うこと。
 前各号の調査(以下「事故調査」という。)の結果に基づき、原子力に関する基本的な政策及び当該政策に関する事項を所掌する行政組織の在り方の見直しを含む原子力発電所の事故の防止及び原子力発電所の事故に伴い発生する被害の軽減のため講ずべき施策又は措置について、提言を行うこと。
 前各号に掲げる事務を行うため必要な調査及び研究を行うこと。

第十一条  委員会は、事故調査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
 前項の規定により委員会に出頭した参考人には、議院に出頭する証人等の旅費及び日当に関する法律 (昭和二十二年法律第八十一号)の規定の例により旅費及び日当を支給する。

第十二条  委員会は、事故調査のため必要があると認めるときは、国の行政機関、地方公共団体の公署、原子力事業者その他の者に対して、資料の提出を要求することができる。この場合においては、当該要求を受けた者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、これに応じなければならない。
 前項の要求を受けた国の行政機関及び地方公共団体の公署は、当該要求を受けた日から七日以内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。ただし、その期間内に当該資料を提出することができないことについて正当の理由がある場合において、その理由及び提出することができる合理的な期限を明示したときは、この限りでない。
 前項ただし書に規定する場合においては、第一項の要求を受けた国の行政機関及び地方公共団体の公署は、当該明示した期限内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。

第十三条  前条第一項の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る資料について、職務上の秘密に関するものであることの申立てを行い、その提出を拒むときは、その理由を疎明しなければならない。この場合において、その理由を委員会において受諾し得るときは、当該国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る資料を提出する必要がない。
 前項の理由を受諾することができない場合は、委員会は、両議院の議長に対して、前条第一項の要求に係る資料の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明又は同項の要求に係る資料の提出が公の利益を害する旨の当該地方公共団体の声明を要求するよう求めることができる。
 前項の求めを受けた各議院の議長が同項の声明を要求し、これに対して同項の声明があった場合は、前条第一項の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る資料を提出する必要がない。
 前項の要求後十日以内に、内閣又は地方公共団体が第二項の声明を出さないときは、前条第一項の要求を受けた国の行政機関又は地方公共団体の公署は、当該要求に係る資料を提出しなければならない。

第十四条  委員会は、委員会における参考人からの意見聴取等委員会の調査を効率的及び実効的に行うため、特定の委員又は事務局職員に、事前又は事後の予備的又は補充的な調査を行わせることができる。
 前項の予備的又は補充的な調査は、特定の委員又は事務局職員を派遣して行うほか、第十一条及び第十二条第一項前段の規定の例に準じて行うものとする。

第十五条  委員会は、特に必要があると認めるときは、両院合同協議会に対し、国会法 附則第七項 の規定により国政に関する調査を行うよう、要請することができるものとする。

第十六条  委員会は、委員長及び委員の任命の日から起算しておおむね六月後を目途として、事故調査の結果及び第十条第五号の提言を記載した報告書を両議院の議長に提出しなければならない。
 両議院の議長は、前項の報告書を受理したときは、これを広く公表する措置を講ずるものとする。
 第一項の報告書は、両議院の議長が協議して定めるところにより、内閣に送付する。

第十七条  委員会は、前条第一項の報告書を提出したときに、その調査活動を終了する。

   第四章 財政措置等

第十八条  この法律の施行に必要となる人員については、国会職員の定員に上乗せして確保されることとするとともに、この法律の施行に必要となる経費が確保されるよう、格別の財政措置が講じられるものとする。

   附 則 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、国会法の一部を改正する法律(平成二十三年法律第百十一号)の施行の日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

(準備行為)
第二条  委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為その他委員会の設置のために必要な準備行為は、この法律の施行前においても行うことができる。

(この法律の失効)
第三条  この法律は、この法律の施行の日から起算して一年を経過した日に、その効力を失う。