歯科口腔保健の推進に関する法律

歯科口腔保健の推進に関する法律
(平成二十三年八月十日法律第九十五号)


第一条  この法律は、口腔の健康が国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしているとともに、国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取組が口腔の健康の保持に極めて有効であることに鑑み、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持(以下「歯科口腔保健」という。)の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、歯科口腔保健の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的に推進し、もって国民保健の向上に寄与することを目的とする。

第二条  歯科口腔保健の推進に関する施策は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。
 国民が、生涯にわたって日常生活において歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、歯科疾患を早期に発見し、早期に治療を受けることを促進すること。
 乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進すること。
 保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、その関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進すること。

第三条  国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、歯科口腔保健の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
 地方公共団体は、基本理念にのっとり、歯科口腔保健の推進に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第四条  歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士その他の歯科医療又は保健指導に係る業務(以下この条及び第十五条第二項において「歯科医療等業務」という。)に従事する者は、歯科口腔保健(歯の機能の回復によるものを含む。)に資するよう、医師その他歯科医療等業務に関連する業務に従事する者との緊密な連携を図りつつ、適切にその業務を行うとともに、国及び地方公共団体が歯科口腔保健の推進に関して講ずる施策に協力するよう努めるものとする。

第五条  法令に基づき国民の健康の保持増進のために必要な事業を行う者は、国及び地方公共団体が歯科口腔保健の推進に関して講ずる施策に協力するよう努めるものとする。

第六条  国民は、歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、生涯にわたって日常生活において自ら歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、定期的に歯科に係る検診(健康診査及び健康診断を含む。第八条において同じ。)を受け、及び必要に応じて歯科保健指導を受けることにより、歯科口腔保健に努めるものとする。

第七条  国及び地方公共団体は、国民が、歯科口腔保健に関する正しい知識を持つとともに、生涯にわたって日常生活において歯科疾患の予防に向けた取組を行うことを促進するため、歯科口腔保健に関する知識及び歯科疾患の予防に向けた取組に関する普及啓発、歯科口腔保健に関する国民の意欲を高めるための運動の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

第八条  国及び地方公共団体は、国民が定期的に歯科に係る検診を受けること及び必要に応じて歯科保健指導を受けること(以下この条及び次条において「定期的に歯科検診を受けること等」という。)を促進するため、定期的に歯科検診を受けること等の勧奨その他の必要な施策を講ずるものとする。

第九条  国及び地方公共団体は、障害者、介護を必要とする高齢者その他の者であって定期的に歯科検診を受けること等又は歯科医療を受けることが困難なものが、定期的に歯科検診を受けること等又は歯科医療を受けることができるようにするため、必要な施策を講ずるものとする。

第十条  前三条に規定するもののほか、国及び地方公共団体は、個別的に又は公衆衛生の見地から行う歯科疾患の効果的な予防のための措置その他の歯科口腔保健のための措置に関する施策を講ずるものとする。

第十一条  国及び地方公共団体は、口腔の健康に関する実態の定期的な調査、口腔の状態が全身の健康に及ぼす影響に関する研究、歯科疾患に係るより効果的な予防及び医療に関する研究その他の口腔の健康に関する調査及び研究の推進並びにその成果の活用の促進のために必要な施策を講ずるものとする。

第十二条  厚生労働大臣は、第七条から前条までの規定により講ぜられる施策につき、それらの総合的な実施のための方針、目標、計画その他の基本的事項を定めるものとする。
 前項の基本的事項は、健康増進法 (平成十四年法律第百三号)第七条第一項 に規定する基本方針、地域保健法 (昭和二十二年法律第百一号)第四条第一項 に規定する基本指針その他の法律の規定による方針又は指針であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
 厚生労働大臣は、第一項の基本的事項を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するものとする。
 厚生労働大臣は、第一項の基本的事項を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

第十三条  都道府県は、前条第一項の基本的事項を勘案して、かつ、地域の状況に応じて、当該都道府県において第七条から第十一条までの規定により講ぜられる施策につき、それらの総合的な実施のための方針、目標、計画その他の基本的事項を定めるよう努めなければならない。
 前項の基本的事項は、健康増進法第八条第一項 に規定する都道府県健康増進計画その他の法律の規定による計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

第十四条  国及び地方公共団体は、歯科口腔保健の推進に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

第十五条  都道府県、保健所を設置する市及び特別区は、口腔保健支援センターを設けることができる。
 口腔保健支援センターは、第七条から第十一条までに規定する施策の実施のため、歯科医療等業務に従事する者等に対する情報の提供、研修の実施その他の支援を行う機関とする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。