鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律

鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律
(平成十九年十二月二十一日法律第百三十四号)


最終改正:平成二四年三月三一日法律第一〇号

第一条  この法律は、農山漁村地域において鳥獣による農林水産業等に係る被害が深刻な状況にあり、これに対処することが緊急の課題となっていることにかんがみ、農林水産大臣による基本指針の策定、市町村による被害防止計画の作成及びこれに基づく特別の措置等について定めることにより、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための施策を総合的かつ効果的に推進し、もって農林水産業の発展及び農山漁村地域の振興に寄与することを目的とする。

第二条  この法律において「鳥獣」とは、鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう。
 この法律において「農林水産業等に係る被害」とは、農林水産業に係る被害及び農林水産業に従事する者等の生命又は身体に係る被害その他の生活環境に係る被害をいう。

第二条の二  市町村は、その区域内における鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況等に応じ、第四条第一項に規定する被害防止計画の作成及びこれに基づく被害防止施策(鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するための施策をいう。以下同じ。)の実施その他の必要な措置を適切に講ずるよう努めるものとする。
 都道府県は、その区域内における鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況、市町村の被害防止施策の実施の状況等を踏まえ、この法律に基づく措置その他の鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第三条  農林水産大臣は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
 次条第一項に規定する被害防止計画に関する事項
 その他被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するために必要な事項
 基本指針は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号。以下「鳥獣保護法」という。)第三条第一項に規定する基本指針と整合性のとれたものでなければならない。
 農林水産大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、環境大臣と協議するものとする。
 農林水産大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

第四条  市町村は、その区域内で被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、基本指針に即して、単独で又は共同して、鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するための計画(以下「被害防止計画」という。)を定めることができる。
 被害防止計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関する基本的な方針
 当該市町村の区域内における農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣であって被害防止計画の対象とするもの(以下「対象鳥獣」という。)の種類
 被害防止計画の期間
 対象鳥獣の捕獲等(農林水産業等に係る被害の防止のための対象鳥獣の捕獲等(鳥獣保護法第二条第三項に規定する捕獲等をいう。以下同じ。)又は対象鳥獣である鳥類の卵の採取等(鳥獣保護法第八条に規定する採取等をいう。)をいう。以下同じ。)に関する事項
 対象鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための防護柵の設置その他の対象鳥獣の捕獲等以外の被害防止施策に関する事項
五の二  対象鳥獣による住民の生命、身体又は財産に係る被害が生じ、又は生じるおそれがある場合の対処に関する事項
 被害防止施策の実施体制に関する事項
 捕獲等をした対象鳥獣の処理に関する事項
 その他被害防止施策の実施に関し必要な事項
 前項第四号の事項には、鳥獣保護法第九条第一項の規定により都道府県知事が行うこととされている対象鳥獣の捕獲等の許可であって第六条第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条第一項の規定により被害防止計画を作成した市町村の長が行うことができるものに係る事項(以下「許可権限委譲事項」という。)を記載することができる。
 被害防止計画は、鳥獣保護事業計画(鳥獣保護法第四条第一項に規定する鳥獣保護事業計画をいう。以下同じ。)(特定鳥獣保護管理計画(鳥獣保護法第七条第一項に規定する特定鳥獣保護管理計画をいう。以下同じ。)が定められている都道府県の区域内の市町村の被害防止計画にあっては、鳥獣保護事業計画及び特定鳥獣保護管理計画)と整合性のとれたものでなければならない。
 市町村は、被害防止計画を定めようとする場合には、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。この場合において、被害防止計画に許可権限委譲事項を記載しようとするときは、当該許可権限委譲事項について都道府県知事の同意を得なければならない。
 都道府県知事は、被害防止計画が当該市町村の鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況に基づいて作成される必要があり、かつ、当該市町村がその状況を適確に把握することができる立場にあることを踏まえ、前項前段の協議を行うものとする。
 都道府県知事は、許可権限委譲事項が記載された被害防止計画について第五項前段の協議を受けた場合には、当該都道府県の区域内において当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣の数が著しく減少しているとき、当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣について広域的に保護を行う必要があるときその他の当該都道府県の区域内において当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣の保護を図る上で著しい支障を生じるおそれがあるときを除き、同項後段の同意をしなければならない。
 市町村は、被害防止計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。この場合において、当該被害防止計画に許可権限委譲事項を記載したときは、農林水産省令で定めるところにより、当該許可権限委譲事項を公告しなければならない。
 第五項から前項までの規定は、被害防止計画の変更について準用する。この場合において、第五項後段中「記載しようとするとき」とあるのは「記載しようとするとき又は当該被害防止計画に記載された許可権限委譲事項を変更しようとするとき」と、第七項中「同項後段」とあるのは「第九項において読み替えて準用する第五項後段」と、前項後段中「記載したとき」とあるのは「記載したとき又は当該被害防止計画に記載された許可権限委譲事項を変更したとき」と読み替えるものとする。
10  被害防止計画を作成した市町村は、毎年度、被害防止計画の実施状況について、都道府県知事に報告しなければならない。
11  市町村は、都道府県知事に対し、被害防止計画の作成及び実施に関し、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を求めることができる。

第四条の二  市町村は、単独で又は共同して、被害防止計画の作成及び変更に関する協議並びに被害防止計画の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
 協議会は、市町村のほか、農林漁業団体、被害防止施策の実施に携わる者及び地域住民並びに学識経験者その他の市町村が必要と認める者をもって構成する。
 前二項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

第五条  都道府県知事は、市町村に対し、被害防止計画の作成及び実施に関し、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を行うよう努めなければならない。

第六条  市町村が許可権限委譲事項が記載されている被害防止計画を作成したときは、第四条第八項後段(同条第九項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による公告の日(次項において「公告の日」という。)から当該被害防止計画の期間が満了する日までの間は、当該被害防止計画を作成した市町村の区域における鳥獣保護法第九条(第十項、第十二項及び第十四項を除く。)、第十条、第十一条第一項、第十三条第一項、第七十五条第一項、第七十九条、第八十三条第一項第二号から第三号まで及び第六号、第八十四条第一項第一号、第八十六条第一号及び第二号並びに第八十七条の規定の適用については、鳥獣保護法第九条第一項中「都道府県知事」とあるのは「都道府県知事(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号。以下「鳥獣被害防止特措法」という。)第四条第一項に規定する被害防止計画に記載されている同条第三項に規定する許可権限委譲事項に係る同条第二項第四号に規定する対象鳥獣の捕獲等をしようとする者にあっては、当該被害防止計画を作成した市町村(以下「計画作成市町村」という。)の長)」と、同条第二項から第九項まで、第十一項及び第十三項並びに鳥獣保護法第十条、第十一条第一項及び第十三条第一項の規定中「又は都道府県知事」とあるのは「、都道府県知事又は計画作成市町村の長」と、鳥獣保護法第七十五条第一項中「又は都道府県知事」とあるのは「若しくは都道府県知事又は計画作成市町村の長」と、「第九条第一項の許可を受けた者」とあるのは「環境大臣又は都道府県知事にあっては第九条第一項の許可を受けた者(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する第九条第一項の規定により計画作成市町村の長の許可を受けた者を除く。)」と、「猟区設定者に対し」とあるのは「猟区設定者に対し、計画作成市町村の長にあっては鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する第九条第一項の規定により計画作成市町村の長の許可を受けた者に対し」と、鳥獣保護法第七十九条第一項中「都道府県知事」とあるのと、同項第六号中「第九条第一項」とあるのは「第九条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護法第八十四条第一項第一号中「第九条第五項」とあるのは「第九条第五項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護法第八十六条第一号中「第十一項」とあるのは「第十一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第二号中「第九条第十三項」とあるのは「第九条第十三項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、「第七十五条第一項」とあるのは「第七十五条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護法第八十七条中「第九条第一項」とあるのは「第九条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とする。
 前項の被害防止計画を作成した市町村の区域においては、公告の日前に鳥獣保護法第九条若しくは第十条の規定により都道府県知事が行った許可等の処分その他の行為又は当該公告の日において現に鳥獣保護法第九条の規定により都道府県知事に対して行っている許可等の申請で当該市町村の許可権限委譲事項に係るものは、当該公告の日以後においては、同項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条若しくは第十条の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為又は同項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請とみなす。
 市町村が第一項の被害防止計画を変更し、許可権限委譲事項の全部若しくは一部が記載されないこととなった場合又は当該被害防止計画の期間が満了した場合においては、第四条第九項において読み替えて準用する同条第八項後段の規定による公告の日又は当該被害防止計画の期間が満了した日(以下「変更公告等の日」という。)前に第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条若しくは第十条の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為(前項の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為とみなされた行為を含む。)又は当該被害防止計画の変更公告等の日において現に第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請(前項の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請とみなされたものを含む。)で当該市町村の許可権限委譲事項に係るもの(当該市町村の許可権限委譲事項の一部が記載されないこととなった場合にあっては、当該記載されないこととなった許可権限委譲事項に係るものに限る。)は、当該変更公告等の日以後においては、鳥獣保護法第九条若しくは第十条の規定により都道府県知事が行った許可等の処分その他の行為又は鳥獣保護法第九条の規定により都道府県知事に対して行っている許可等の申請とみなす。
 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護法第九条第一項の規定により被害防止計画を作成した市町村の長が対象鳥獣の捕獲等の許可を行う場合における鳥獣保護法その他の法令の規定に関する技術的読替えその他これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

第七条  都道府県知事は、当該都道府県の区域内における被害防止計画の作成状況、第四条第十項の規定による報告の内容等を踏まえ、必要があると認めるときは、特定鳥獣保護管理計画を作成し、又は変更するよう努めるものとする。

第七条の二  市町村長は、当該市町村が行う被害防止計画に基づく被害防止施策のみによっては対象鳥獣による当該市町村の区域内における農林水産業等に係る被害を十分に防止することが困難であると認めるときは、都道府県知事に対し、必要な措置を講ずるよう要請することができる。
 都道府県知事は、前項の規定による要請があったときは、速やかに必要な調査を行い、その結果必要があると認めるときは、特定鳥獣保護管理計画の作成若しくは変更又はその実施その他の当該都道府県の区域内における鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

第八条  国及び都道府県は、市町村が行う被害防止計画に基づく被害防止施策が円滑に実施されるよう、対象鳥獣の捕獲等に要する費用に対する補助その他当該被害防止施策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。

第九条  市町村は、対象鳥獣の捕獲等、防護柵の設置その他の被害防止計画に基づく被害防止施策を適切に実施するため、鳥獣被害対策実施隊を設けることができる。
 鳥獣被害対策実施隊に鳥獣被害対策実施隊員を置く。
 前項に規定する鳥獣被害対策実施隊員は、次に掲げる者をもって充てる。
 市町村長が市町村の職員のうちから指名する者
 被害防止計画に基づく被害防止施策の実施に積極的に取り組むことが見込まれる者(主として対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者にあっては、これを適正かつ効果的に行うことができる者に限る。)のうちから、市町村長が任命する者
 第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員は、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施に従事するほか、市町村長の指示を受け、農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣の捕獲等で住民の生命、身体又は財産に係る被害を防止するため緊急に行う必要があるものに従事する。
 第三項第二号に掲げる鳥獣被害対策実施隊員は、非常勤とする。
 第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員であって主として対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者として市町村長により指名され、又は任命されたものに係る鳥獣保護法第五十五条第一項の狩猟者登録についての鳥獣保護法第五十六条、第五十七条第一項及び第六十一条第四項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、鳥獣保護法第五十六条中「次に掲げる事項」とあるのは「次に掲げる事項並びに対象鳥獣捕獲員(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号)第九条第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員(以下「鳥獣被害対策実施隊員」という。)であって主として同法第四条第二項第四号に規定する対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者として市町村長により指名され、又は任命されたものをいう。以下同じ。)である旨及び所属市町村(当該狩猟者登録を受けようとする者が対象鳥獣捕獲員たる鳥獣被害対策実施隊員として所属する市町村であって、当該登録都道府県知事が管轄する区域内にあるものをいう。以下同じ。)の名称」と、鳥獣保護法第五十七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「次に掲げる事項並びに対象鳥獣捕獲員である旨及び所属市町村の名称」と、鳥獣保護法第六十一条第四項中「生じたとき」とあるのは「生じたとき又は対象鳥獣捕獲員となったとき、対象鳥獣捕獲員でなくなったとき若しくは所属市町村の変更があったとき」とする。
 第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員については、被害防止計画に基づく被害防止施策の適切かつ円滑な実施に資するため、地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)の定めるところによる狩猟税の軽減の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとする。

第十条  国及び地方公共団体は、被害防止計画に基づき捕獲等をした対象鳥獣の適正な処理及び食品としての利用等その有効な利用を図るため、必要な施設の整備充実、環境に悪影響を及ぼすおそれのない処理方法その他適切な処理方法についての指導、有効な利用方法の開発、食品としての利用に係る技術の普及、加工品の流通の円滑化その他の必要な措置を講ずるものとする。

第十条の二  農林水産大臣又は都道府県知事は、市町村長に対し、当該市町村における被害防止施策の実施等に関し必要があると認めるときは、報告を求め、又は必要な勧告、助言若しくは援助をすることができる。

第十一条  農林水産大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、環境大臣その他の関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
 農林水産大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、環境大臣に対して鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関し、文部科学大臣又は文部科学大臣を通じ文化庁長官に対して天然記念物の保存に関し、意見を述べることができる。
 環境大臣は、鳥獣の保護を図る等の見地から被害防止施策に関し必要があると認めるときは、農林水産大臣に対して意見を述べることができる。

第十二条  国及び地方公共団体は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、農林水産業及び農山漁村の振興に関する業務を担当する部局、鳥獣の保護及び管理に関する業務を担当する部局その他鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関連する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保しなければならない。
 地方公共団体は、被害防止施策を効果的に実施するため、被害防止計画の作成及び実施等に当たっては、当該地方公共団体における鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況等に応じ、地方公共団体相互の広域的な連携協力を確保しなければならない。
 地方公共団体は、被害防止施策を実施するに当たっては、地域における一体的な取組が行われるよう、当該地域の農林漁業団体その他の関係団体との緊密な連携協力の確保に努めなければならない。
 農林漁業団体その他の関係団体は、自主的に鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に努めるとともに、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施その他の国及び地方公共団体が講ずる被害防止施策に協力するよう努めなければならない。

第十三条  国及び地方公共団体は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況、農林水産業等に係る被害に係る鳥獣の生息の状況及び生息環境その他鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関し必要な事項について調査を行うものとする。
 国及び地方公共団体は、前項の規定による調査の結果を踏まえ、農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣に関し、その生息環境等を考慮しつつ適正と認められる個体数についての調査研究を行うものとする。
 国及び地方公共団体は、前二項の規定による調査及び研究の結果を公表するとともに、基本指針の策定又は変更、被害防止計画の作成又は変更その他この法律の運用に当たって、適切にこれらを活用しなければならない。

第十四条  国及び都道府県は、被害防止施策の総合的かつ効果的な実施を推進するため、前条第一項の規定による調査の結果等を踏まえ、鳥獣による農林水産業等に係る被害の原因を究明するとともに、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関し、調査研究及び技術開発の推進並びに情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

 前項に定めるもののほか、国及び地方公共団体は、農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣の捕獲等に関わる人材の確保に資するため、当該捕獲等への貢献に対する報償金の交付、射撃場の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第十六条の二  国及び地方公共団体は、被害防止施策(第十条及び第十三条から前条までの措置を含む。)を講ずるために必要な予算の確保に努めるものとする。
 都道府県は、前項の規定により必要な予算を確保するに当たっては、狩猟税の収入につき、その課税の目的を踏まえた適切かつ効果的な活用に配意するものとする。

第十七条  国及び地方公共団体は、鳥獣の習性等を踏まえて鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止することの重要性に関する国民の理解と関心を深めるよう、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関する知識の普及及び啓発のための広報活動その他必要な措置を講ずるものとする。

第十八条  国及び地方公共団体は、人と鳥獣の共存に配慮し、鳥獣の良好な生息環境の整備及び保全に資するため、地域の特性に応じ、間伐の推進、広葉樹林の育成その他の必要な措置を講ずるものとする。

第十九条  国及び地方公共団体は、被害防止施策を講ずるに当たっては、生物の多様性の確保に留意するとともに、その数が著しく減少している鳥獣又は著しく減少するおそれのある鳥獣については、当該鳥獣の特性を考慮した適切な施策を講ずることによりその保護が図られるよう十分配慮するものとする。

第二十条  国及び地方公共団体は、被害防止施策と相まって農林漁業及び関連する産業の振興並びに農山漁村の活性化を図ることにより、安全にかつ安心して農林水産業を営むことができる活力ある農山漁村地域の実現を図るよう努めなければならない。

   附 則 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から起算して二月を経過した日から施行する。

(見直し)
第二条  被害防止施策については、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況、鳥獣による農林水産業等に係る被害の発生状況等を勘案し、その全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直しが行われるものとする。

(特定鳥獣被害対策実施隊員等に係る猟銃の操作及び射撃の技能に関する講習に係る特例)
第三条  第九条第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員として猟銃を使用して対象鳥獣の捕獲等に従事している者であって内閣府令・農林水産省令・環境省令で定めるもの(次項において「特定鳥獣被害対策実施隊員」という。)が、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律(平成二十四年法律第十号)附則第一項ただし書に規定する日(次項において「改正法一部施行日」という。)以後に新たに銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第四条の二第一項の規定により当該種類の猟銃の所持の許可の申請をした場合又は同法第七条の三第一項の規定による当該種類の猟銃の所持の許可の更新の申請をした場合においては、当分の間、同法第五条の二第三項第一号中「所持している者(当該猟銃に係る第五条の五第二項の技能講習修了証明書(次号において「技能講習修了証明書」という。)の交付を受け、その交付を受けた日から起算して三年を経過していない者又は当該種類の猟銃に係る射撃競技で政令で定めるものに参加する選手若しくはその候補者として適当であるとして政令で定める者から推薦された者に限る。)」とあるのは「所持している者」と、同項第二号中「経過しないもの(当該許可を受けて所持していた猟銃に係る技能講習修了証明書の交付を受け、その交付を受けた日から起算して三年を経過していない者に限る。)」とあるのは「経過しないもの」とする。
 前項に定めるもののほか、被害防止計画に基づく対象鳥獣の捕獲等に従事している者(特定鳥獣被害対策実施隊員を除き、猟銃を使用して当該捕獲等に従事しているものに限る。)であって内閣府令・農林水産省令・環境省令で定めるものが、改正法一部施行日から平成二十六年十二月三日までの間に新たに銃砲刀剣類所持等取締法第四条の二第一項の規定により当該種類の猟銃の所持の許可の申請をした場合又は同法第七条の三第一項の規定による当該種類の猟銃の所持の許可の更新の申請をした場合においては、同法第五条の二第三項第一号中「所持している者(当該猟銃に係る第五条の五第二項の技能講習修了証明書(次号において「技能講習修了証明書」という。)の交付を受け、その交付を受けた日から起算して三年を経過していない者又は当該種類の猟銃に係る射撃競技で政令で定めるものに参加する選手若しくはその候補者として適当であるとして政令で定める者から推薦された者に限る。)」とあるのは「所持している者」と、同項第二号中「経過しないもの(当該許可を受けて所持していた猟銃に係る技能講習修了証明書の交付を受け、その交付を受けた日から起算して三年を経過していない者に限る。)」とあるのは「経過しないもの」とする。

   附 則 (平成二四年三月三一日法律第一〇号) 抄

(施行期日)
 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条の改正規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。