労働審判法¶
労働審判法(平成十六年五月十二日法律第四十五号)
最終改正:平成二三年五月二五日法律第五三号
(最終改正までの未施行法令) | |
平成二十三年五月二十五日法律第五十三号 | (未施行) |
第一条
この法律は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判をいう。以下同じ。)を行う手続(以下「労働審判手続」という。)を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。
第二条
労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。
2
裁判所は、労働審判事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために適当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
第四条
労働審判手続については、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ代理人となることができない。ただし、裁判所は、当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる。
2
裁判所は、前項ただし書の規定による許可を取り消すことができる。
2
前項の申立ては、その趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。
2
労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから任命する。
3
労働審判員は、非常勤とし、前項に規定するもののほか、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
4
労働審判員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
2
裁判所は、前項の規定により労働審判員を指定するに当たっては、労働審判員の有する知識経験その他の事情を総合的に勘案し、労働審判委員会における労働審判員の構成について適正を確保するように配慮しなければならない。
2
労働審判委員会の評議は、秘密とする。
2
労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない。
2
証拠調べについては、民事訴訟の例による。
2
労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相当と認める事項を定めることができる。
3
労働審判は、主文及び理由の要旨を記載した審判書を作成して行わなければならない。
4
前項の審判書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、労働審判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
5
前項の規定による審判書の送達については、民事訴訟法第一編第五章第四節
(第百四条及び第百十条から第百十三条までを除く。)の規定を準用する。
6
労働審判委員会は、相当と認めるときは、第三項の規定にかかわらず、審判書の作成に代えて、すべての当事者が出頭する労働審判手続の期日において労働審判の主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、労働審判を行うことができる。この場合においては、労働審判の効力は、告知された時に生ずる。
7
裁判所は、前項前段の規定により労働審判が行われたときは、裁判所書記官に、その主文及び理由の要旨を、調書に記載させなければならない。
2
裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3
適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は、その効力を失う。
4
適法な異議の申立てがないときは、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
5
前項の場合において、各当事者は、その支出した費用のうち労働審判に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。
第二十二条
労働審判に対し適法な異議の申立てがあったときは、労働審判手続の申立てに係る請求については、当該労働審判手続の申立ての時に、当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合において、当該請求について民事訴訟法第一編第二章第一節
の規定により日本の裁判所が管轄権を有しないときは、提起があったものとみなされた訴えを却下するものとする。
2
前項の規定により訴えの提起があったものとみなされる事件(同項後段の規定により却下するものとされる訴えに係るものを除く。)は、同項の地方裁判所の管轄に属する。
3
第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、民事訴訟法第百三十七条
、第百三十八条及び第百五十八条の規定の適用については、第五条第二項の書面を訴状とみなす。
第二十三条
第二十条第四項の規定により審判書を送達すべき場合において、次に掲げる事由があるときは、裁判所は、決定で、労働審判を取り消さなければならない。
一
当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないこと。
二
第二十条第五項において準用する三
外国においてすべき送達について、第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百八条
の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認められること。
2
前条の規定は、前項の規定により労働審判が取り消された場合について準用する。
2
第二十二条の規定は、前項の規定により労働審判事件が終了した場合について準用する。この場合において、同条第一項中「当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた」とあるのは、「労働審判事件が終了した際に当該労働審判事件が係属していた」と読み替えるものとする。
第二十五条
裁判所は、労働審判事件が終了した場合(第十八条及び第二十一条第五項に規定する場合を除く。)において、必要と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件に関する手続の費用の負担を命ずる決定をすることができる。
第二十六条
当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、労働審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は労働審判事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
第二十九条
労働審判事件に関しては、非訟事件手続法
(明治三十一年法律第十四号)第一編
(第三条、第六条、第七条、第十条中民事訴訟に関する法令の規定中人証及び鑑定に関する規定を準用する部分、第十一条、第十三条、第十五条、第二十一条並びに第三十二条を除く。)並びに民事調停法
(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十一条
、第十二条、第十六条及び第三十六条の規定を準用する。この場合において、非訟事件手続法第二十六条
中「裁判前ノ手続及ビ裁判ノ告知ノ費用」とあるのは「労働審判事件ニ関スル手続ノ費用」と、民事調停法第十一条
中「調停の」とあるのは「労働審判手続の」と、「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停手続」とあるのは「労働審判手続」と、同法第十二条第一項
中「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停の」とあるのは「調停又は労働審判の」と、「調停前の措置」とあるのは「調停又は労働審判前の措置」と、同法第三十六条第一項
中「前二条」とあるのは「労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第三十一条及び第三十二条」と読み替えるものとする。
第三十二条
当事者が正当な理由がなく第二十九条において準用する民事調停法第十二条
の規定による措置に従わないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。
附 則 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第九条の規定は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附 則 (平成二三年五月二日法律第三六号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附 則 (平成二三年五月二五日法律第五三号)
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。