第百九十七条
次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
二
医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
第百九十八条
証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。
第百九十九条
第百九十七条第一項第一号の場合を除き、証言拒絶の当否については、受訴裁判所が、当事者を審尋して、決定で、裁判をする。
2
前項の裁判に対しては、当事者及び証人は、即時抗告をすることができる。
第二百条
第百九十二条及び第百九十三条の規定は、証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく証言を拒む場合について準用する。
第二百一条
証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
2
十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
3
第百九十六条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には、宣誓をさせないことができる。
4
証人は、自己又は自己と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
5
第百九十八条及び第百九十九条の規定は証人が宣誓を拒む場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく宣誓を拒む場合について準用する。
第二百二条
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
2
裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
3
当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
第二百三条
証人は、書類に基づいて陳述することができない。ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない。
第二百三条の二
裁判長は、証人の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し、証人が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の陳述中、証人に付き添わせることができる。
2
前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の陳述中、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
3
当事者が、第一項の規定による裁判長の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
第二百三条の三
裁判長は、事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係(証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることを含む。次条第二号において同じ。)その他の事情により、証人が当事者本人又はその法定代理人の面前(同条に規定する方法による場合を含む。)において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人又は法定代理人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
2
裁判長は、事案の性質、証人が犯罪により害を被った者であること、証人の年齢、心身の状態又は名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
3
前条第三項の規定は、前二項の規定による裁判長の処置について準用する。
第二百四条
裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
二
事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
第二百五条
裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
第二百六条
受命裁判官又は受託裁判官が証人尋問をする場合には、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。ただし、第二百二条第三項の規定による異議についての裁判は、受訴裁判所がする。
第三節 当事者尋問
第二百七条
裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
2
証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
第二百八条
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
第二百九条
宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3
第一項の場合において、虚偽の陳述をした当事者が訴訟の係属中その陳述が虚偽であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
第二百十条
第百九十五条、第二百一条第二項、第二百二条から第二百四条まで及び第二百六条の規定は、当事者本人の尋問について準用する。
第二百十一条
この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
第四節 鑑定
2
第百九十六条又は第二百一条第四項の規定により証言又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。
第二百十三条
鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。
第二百十四条
鑑定人について誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は、その鑑定人が鑑定事項について陳述をする前に、これを忌避することができる。鑑定人が陳述をした場合であっても、その後に、忌避の原因が生じ、又は当事者がその原因があることを知ったときは、同様とする。
2
忌避の申立ては、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官にしなければならない。
3
忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4
忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百十五条
裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる。
2
裁判所は、鑑定人に意見を述べさせた場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、鑑定人に更に意見を述べさせることができる。
第二百十五条の二
裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。
2
前項の質問は、裁判長、その鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序でする。
3
裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
4
当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
第二百十五条の三
裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合において、鑑定人が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、意見を述べさせることができる。
第二百十五条の四
受命裁判官又は受託裁判官が鑑定人に意見を述べさせる場合には、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。ただし、第二百十五条の二第四項の規定による異議についての裁判は、受訴裁判所がする。
第二百十六条
第百九十一条の規定は公務員又は公務員であった者に鑑定人として職務上の秘密について意見を述べさせる場合について、第百九十七条から第百九十九条までの規定は鑑定人が鑑定を拒む場合について、第二百一条第一項の規定は鑑定人に宣誓をさせる場合について、第百九十二条及び第百九十三条の規定は鑑定人が正当な理由なく出頭しない場合、鑑定人が宣誓を拒む場合及び鑑定拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に鑑定人が正当な理由なく鑑定を拒む場合について準用する。
第二百十七条
特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。
第二百十八条
裁判所は、必要があると認めるときは、官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することができる。この場合においては、宣誓に関する規定を除き、この節の規定を準用する。
2
前項の場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、官庁、公署又は法人の指定した者に鑑定書の説明をさせることができる。
第五節 書証
第二百十九条
書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
第二百二十条
次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一
当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
二
挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
三
文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
四
前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書
第二百二十一条
文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
2
前条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。
第二百二十二条
文書提出命令の申立てをする場合において、前条第一項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることが著しく困難であるときは、その申立ての時においては、これらの事項に代えて、文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足りる。この場合においては、裁判所に対し、文書の所持者に当該文書についての同項第一号又は第二号に掲げる事項を明らかにすることを求めるよう申し出なければならない。
2
前項の規定による申出があったときは、裁判所は、文書提出命令の申立てに理由がないことが明らかな場合を除き、文書の所持者に対し、同項後段の事項を明らかにすることを求めることができる。
第二百二十三条
裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
2
裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
3
裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第二百二十条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁(衆議院又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない。
4
前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。
一
国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
二
犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ
5
第三項前段の場合において、当該監督官庁は、当該文書の所持者以外の第三者の技術又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは、第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き、あらかじめ、当該第三者の意見を聴くものとする。
6
裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
7
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百二十四条
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2
当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3
前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
第二百二十五条
第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百二十六条
書証の申出は、第二百十九条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
第二百二十七条
裁判所は、必要があると認めるときは、提出又は送付に係る文書を留め置くことができる。
第二百二十八条
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2
文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3
公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5
第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
第二百二十九条
文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる。
2
第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条第一項及び第二項、第二百二十六条並びに第二百二十七条の規定は、対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件の提出又は送付について準用する。
3
対照をするのに適当な相手方の筆跡がないときは、裁判所は、対照の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができる。
4
相手方が正当な理由なく前項の規定による決定に従わないときは、裁判所は、文書の成立の真否に関する挙証者の主張を真実と認めることができる。書体を変えて筆記したときも、同様とする。
5
第三者が正当な理由なく第二項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
6
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百三十条
当事者又はその代理人が故意又は重大な過失により真実に反して文書の成立の真正を争ったときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3
第一項の場合において、文書の成立の真正を争った当事者又は代理人が訴訟の係属中その文書の成立が真正であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
第二百三十一条
この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。
第六節 検証
第二百三十二条
第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条、第二百二十六条及び第二百二十七条の規定は、検証の目的の提示又は送付について準用する。
2
第三者が正当な理由なく前項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
3
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百三十三条
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる。
第七節 証拠保全
第二百三十四条
裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
第二百三十五条
訴えの提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続若しくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない。
2
訴えの提起前における証拠保全の申立ては、尋問を受けるべき者若しくは文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない。
3
急迫の事情がある場合には、訴えの提起後であっても、前項の地方裁判所又は簡易裁判所に証拠保全の申立てをすることができる。
第二百三十六条
証拠保全の申立ては、相手方を指定することができない場合においても、することができる。この場合においては、裁判所は、相手方となるべき者のために特別代理人を選任することができる。
第二百三十七条
裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟の係属中、職権で、証拠保全の決定をすることができる。
第二百三十八条
証拠保全の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二百三十九条
第二百三十五条第一項ただし書の場合には、裁判所は、受命裁判官に証拠調べをさせることができる。
第二百四十条
証拠調べの期日には、申立人及び相手方を呼び出さなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。
第二百四十一条
証拠保全に関する費用は、訴訟費用の一部とする。
第二百四十二条
証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
第五章 判決
第二百四十三条
裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
2
裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる。
3
前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中その一が裁判をするのに熟した場合及び本訴又は反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
第二百四十四条
裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。
第二百四十五条
裁判所は、独立した攻撃又は防御の方法その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間判決をすることができる。請求の原因及び数額について争いがある場合におけるその原因についても、同様とする。
第二百四十六条
裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
第二百四十七条
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
第二百四十八条
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
第二百四十九条
判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。
2
裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
3
単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
第二百五十条
判決は、言渡しによってその効力を生ずる。
第二百五十一条
判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。
2
判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる。
第二百五十二条
判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。
第二百五十三条
判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
2
事実の記載においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
第二百五十四条
次に掲げる場合において、原告の請求を認容するときは、判決の言渡しは、第二百五十二条の規定にかかわらず、判決書の原本に基づかないですることができる。
一
被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合
二
被告が公示送達による呼出しを受けたにもかかわらず口頭弁論の期日に出頭しない場合(被告の提出した準備書面が口頭弁論において陳述されたものとみなされた場合を除く。)
2
前項の規定により判決の言渡しをしたときは、裁判所は、判決書の作成に代えて、裁判所書記官に、当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨を、判決の言渡しをした口頭弁論期日の調書に記載させなければならない。
第二百五十五条
判決書又は前条第二項の調書は、当事者に送達しなければならない。
2
前項に規定する送達は、判決書の正本又は前条第二項の調書の謄本によってする。
第二百五十六条
裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後一週間以内に限り、変更の判決をすることができる。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない。
3
前項の判決の言渡期日の呼出しにおいては、公示送達による場合を除き、送達をすべき場所にあてて呼出状を発した時に、送達があったものとみなす。
第二百五十七条
判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2
更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
第二百五十八条
裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。
2
訴訟費用の負担の裁判を脱漏したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟費用の負担について、決定で、裁判をする。この場合においては、第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。
3
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4
第二項の規定による訴訟費用の負担の裁判は、本案判決に対し適法な控訴があったときは、その効力を失う。この場合においては、控訴裁判所は、訴訟の総費用について、その負担の裁判をする。
第二百五十九条
財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
2
手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
3
裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。
4
仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。前項の規定による宣言についても、同様とする。
5
仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき、又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、補充の決定をする。第三項の申立てについて裁判をしなかったときも、同様とする。
6
第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、第一項から第三項までの担保について準用する。
第二百六十条
仮執行の宣言は、その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失う。
2
本案判決を変更する場合には、裁判所は、被告の申立てにより、その判決において、仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還及び仮執行により又はこれを免れるために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければならない。
3
仮執行の宣言のみを変更したときは、後に本案判決を変更する判決について、前項の規定を適用する。
第六章 裁判によらない訴訟の完結
第二百六十一条
訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
第二百六十二条
訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
2
本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。
第二百六十三条
当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。
第二百六十四条
当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
第二百六十五条
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2
前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3
第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4
当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
5
第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
第二百六十六条
請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
2
請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
第二百六十七条
和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
第七章 大規模訴訟等に関する特則
第二百六十八条
裁判所は、大規模訴訟(当事者が著しく多数で、かつ、尋問すべき証人又は当事者本人が著しく多数である訴訟をいう。)に係る事件について、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人又は当事者本人の尋問をさせることができる。
第二百六十九条
地方裁判所においては、前条に規定する事件について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。
2
前項の場合には、判事補は、同時に三人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。
第二百六十九条の二
第六条第一項各号に定める裁判所においては、特許権等に関する訴えに係る事件について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る事件については、この限りでない。
2
前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
第八章 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則
第二百七十条
簡易裁判所においては、簡易な手続により迅速に紛争を解決するものとする。
第二百七十一条
訴えは、口頭で提起することができる。
第二百七十二条
訴えの提起においては、請求の原因に代えて、紛争の要点を明らかにすれば足りる。
第二百七十三条
当事者双方は、任意に裁判所に出頭し、訴訟について口頭弁論をすることができる。この場合においては、訴えの提起は、口頭の陳述によってする。
第二百七十四条
被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。この場合においては、第二十二条の規定を準用する。
2
前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二百七十五条
民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
2
前項の和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所は、直ちに訴訟の弁論を命ずる。この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時に、訴えを提起したものとみなし、和解の費用は、訴訟費用の一部とする。
3
申立人又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみなすことができる。
4
第一項の和解については、第二百六十四条及び第二百六十五条の規定は、適用しない。
第二百七十五条の二
金銭の支払の請求を目的とする訴えについては、裁判所は、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いて、第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをして、当該請求に係る金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
2
前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3
第一項の決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることができる。
4
前項の期間内に異議の申立てがあったときは、第一項の決定は、その効力を失う。
5
第三項の期間内に異議の申立てがないときは、第一項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第二百七十六条
口頭弁論は、書面で準備することを要しない。
2
相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項は、前項の規定にかかわらず、書面で準備し、又は口頭弁論前直接に相手方に通知しなければならない。
3
前項に規定する事項は、相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載し、又は同項の規定による通知をしたものでなければ、主張することができない。
第二百七十七条
第百五十八条の規定は、原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。
第二百七十八条
裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。
第二百七十九条
裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。
2
司法委員の員数は、各事件について一人以上とする。
3
司法委員は、毎年あらかじめ地方裁判所の選任した者の中から、事件ごとに裁判所が指定する。
4
前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
5
司法委員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。
第二百八十条
判決書に事実及び理由を記載するには、請求の趣旨及び原因の要旨、その原因の有無並びに請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。
第三編 上訴
第一章 控訴
第二百八十一条
控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。
2
第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。
第二百八十二条
訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して控訴をすることができない。
第二百八十三条
終局判決前の裁判は、控訴裁判所の判断を受ける。ただし、不服を申し立てることができない裁判及び抗告により不服を申し立てることができる裁判は、この限りでない。
第二百八十四条
控訴をする権利は、放棄することができる。
第二百八十五条
控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。
第二百八十六条
控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
2
控訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
二
第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨
第二百八十七条
控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければならない。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百八十八条
第百三十七条の規定は、控訴状が第二百八十六条第二項の規定に違反する場合及び
民事訴訟費用等に関する法律
の規定に従い控訴の提起の手数料を納付しない場合について準用する。
第二百八十九条
控訴状は、被控訴人に送達しなければならない。
2
第百三十七条の規定は、控訴状の送達をすることができない場合(控訴状の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。
第二百九十条
控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、控訴を却下することができる。
第二百九十一条
控訴裁判所は、
民事訴訟費用等に関する法律
の規定に従い当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて控訴人に命じた場合において、その予納がないときは、決定で、控訴を却下することができる。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百九十二条
控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
2
第二百六十一条第三項、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。
第二百九十三条
被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。
2
附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。
3
附帯控訴については、控訴に関する規定による。ただし、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。
第二百九十四条
控訴裁判所は、第一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。
第二百九十五条
仮執行に関する控訴審の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、前条の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百九十六条
口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。
2
当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
第二百九十七条
前編第一章から第七章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第二百六十九条の規定は、この限りでない。
第二百九十八条
第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。
2
第百六十七条の規定は、第一審において準備的口頭弁論を終了し、又は弁論準備手続を終結した事件につき控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について、第百七十八条の規定は、第一審において書面による準備手続を終結した事件につき同条の陳述又は確認がされた場合において控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
第二百九十九条
控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができない。ただし、専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)については、この限りでない。
2
前項の第一審裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項ただし書の規定は、適用しない。
第三百条
控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。
2
相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなす。
3
前二項の規定は、選定者に係る請求の追加について準用する。
第三百一条
裁判長は、当事者の意見を聴いて、攻撃若しくは防御の方法の提出、請求若しくは請求の原因の変更、反訴の提起又は選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができる。
2
前項の規定により定められた期間の経過後に同項に規定する訴訟行為をする当事者は、裁判所に対し、その期間内にこれをすることができなかった理由を説明しなければならない。
第三百二条
控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない。
2
第一審判決がその理由によれば不当である場合においても、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければならない。
第三百三条
控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
2
前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。
3
第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。
4
上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。
5
第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。
第三百四条
第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。
第三百五条
控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときは、これを取り消さなければならない。
第三百六条
第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。
第三百七条
控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。
第三百八条
前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。
2
第一審裁判所における訴訟手続が法律に違反したことを理由として事件を差し戻したときは、その訴訟手続は、これによって取り消されたものとみなす。
第三百九条
控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。
第三百十条
控訴裁判所は、金銭の支払の請求(第二百五十九条第二項の請求を除く。)に関する判決については、申立てがあるときは、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
第三百十条の二
第六条第一項各号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴が提起された東京高等裁判所においては、当該控訴に係る事件について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴に係る事件については、この限りでない。
第二章 上告
第三百十一条
上告は、高等裁判所が第二審又は第一審としてした終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所にすることができる。
2
第二百八十一条第一項ただし書の場合には、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、直ちに上告をすることができる。
第三百十二条
上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2
上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
二
法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二
日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三
専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四
法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
六
判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3
高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。
第三百十三条
前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。
第三百十四条
上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならない。
2
前条において準用する第二百八十八条及び第二百八十九条第二項の規定による裁判長の職権は、原裁判所の裁判長が行う。
第三百十五条
上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。
2
上告の理由は、最高裁判所規則で定める方式により記載しなければならない。
第三百十六条
次の各号に該当することが明らかであるときは、原裁判所は、決定で、上告を却下しなければならない。
一
上告が不適法でその不備を補正することができないとき。
二
前条第一項の規定に違反して上告理由書を提出せず、又は上告の理由の記載が同条第二項の規定に違反しているとき。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第三百十七条
前条第一項各号に掲げる場合には、上告裁判所は、決定で、上告を却下することができる。
2
上告裁判所である最高裁判所は、上告の理由が明らかに第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由に該当しない場合には、決定で、上告を棄却することができる。
第三百十八条
上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
2
前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。
3
第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
4
第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第三百二十条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
5
第三百十三条から第三百十五条まで及び第三百十六条第一項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。
第三百十九条
上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。
第三百二十条
上告裁判所は、上告の理由に基づき、不服の申立てがあった限度においてのみ調査をする。
第三百二十一条
原判決において適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する。
2
第三百十一条第二項の規定による上告があった場合には、上告裁判所は、原判決における事実の確定が法律に違反したことを理由として、その判決を破棄することができない。
第三百二十二条
前二条の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。
第三百二十三条
上告裁判所は、原判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。
第三百二十四条
上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由があるときは、決定で、事件を最高裁判所に移送しなければならない。
第三百二十五条
第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由があるときは、上告裁判所は、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送しなければならない。高等裁判所が上告裁判所である場合において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときも、同様とする。
2
上告裁判所である最高裁判所は、第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送することができる。
3
前二項の規定により差戻し又は移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をしなければならない。この場合において、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断は、差戻し又は移送を受けた裁判所を拘束する。
4
原判決に関与した裁判官は、前項の裁判に関与することができない。
第三百二十六条
次に掲げる場合には、上告裁判所は、事件について裁判をしなければならない。
一
確定した事実について憲法その他の法令の適用を誤ったことを理由として判決を破棄する場合において、事件がその事実に基づき裁判をするのに熟するとき。
二
事件が裁判所の権限に属しないことを理由として判決を破棄するとき。
第三百二十七条
高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができる。
2
前項の上告及びその上告審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。この場合において、第三百二十一条第一項中「原判決」とあるのは、「地方裁判所が第二審としてした終局判決(第三百十一条第二項の規定による上告があった場合にあっては、簡易裁判所の終局判決)」と読み替えるものとする。
第三章 抗告
第三百二十八条
口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。
2
決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。
第三百二十九条
受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、受訴裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、その裁判が受訴裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2
抗告は、前項の申立てについての裁判に対してすることができる。
3
最高裁判所又は高等裁判所が受訴裁判所である場合における第一項の規定の適用については、同項ただし書中「受訴裁判所」とあるのは、「地方裁判所」とする。
第三百三十条
抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。
第三百三十一条
抗告及び抗告裁判所の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第一章の規定を準用する。ただし、前条の抗告及びこれに関する訴訟手続には、前章の規定中第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。
第三百三十二条
即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
第三百三十三条
原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。
第三百三十四条
抗告は、即時抗告に限り、執行停止の効力を有する。
2
抗告裁判所又は原裁判をした裁判所若しくは裁判官は、抗告について決定があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。
第三百三十五条
抗告裁判所は、抗告について口頭弁論をしない場合には、抗告人その他の利害関係人を審尋することができる。
第三百三十六条
地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2
前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
3
第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。
第三百三十七条
高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2
前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
3
前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
4
第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
5
最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
6
第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。
第四編 再審
第三百三十八条
次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
二
法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三
法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
四
判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
五
刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
六
判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
七
証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
八
判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
九
判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
十
不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。
2
前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。
第三百三十九条
判決の基本となる裁判について前条第一項に規定する事由がある場合(同項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合にあっては、同条第二項に規定する場合に限る。)には、その裁判に対し独立した不服申立ての方法を定めているときにおいても、その事由を判決に対する再審の理由とすることができる。
第三百四十条
再審の訴えは、不服の申立てに係る判決をした裁判所の管轄に専属する。
2
審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する。
第三百四十一条
再審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、各審級における訴訟手続に関する規定を準用する。
第三百四十二条
再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内に提起しなければならない。
2
判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から五年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。
3
前二項の規定は、第三百三十八条第一項第三号に掲げる事由のうち代理権を欠いたこと及び同項第十号に掲げる事由を理由とする再審の訴えには、適用しない。
第三百四十三条
再審の訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
二
不服の申立てに係る判決の表示及びその判決に対して再審を求める旨
第三百四十四条
再審の訴えを提起した当事者は、不服の理由を変更することができる。
第三百四十五条
裁判所は、再審の訴えが不適法である場合には、決定で、これを却下しなければならない。
2
裁判所は、再審の事由がない場合には、決定で、再審の請求を棄却しなければならない。
3
前項の決定が確定したときは、同一の事由を不服の理由として、更に再審の訴えを提起することができない。
第三百四十六条
裁判所は、再審の事由がある場合には、再審開始の決定をしなければならない。
2
裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方を審尋しなければならない。
第三百四十七条
第三百四十五条第一項及び第二項並びに前条第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第三百四十八条
裁判所は、再審開始の決定が確定した場合には、不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする。
2
裁判所は、前項の場合において、判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。
3
裁判所は、前項の場合を除き、判決を取り消した上、更に裁判をしなければならない。
第三百四十九条
即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができる。
2
第三百三十八条から前条までの規定は、前項の申立てについて準用する。
第五編 手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則
第三百五十条
手形による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求めることができる。
2
手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴状に記載してしなければならない。
第三百五十一条
手形訴訟においては、反訴を提起することができない。
第三百五十二条
手形訴訟においては、証拠調べは、書証に限りすることができる。
2
文書の提出の命令又は送付の嘱託は、することができない。対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える物件の提出の命令又は送付の嘱託についても、同様とする。
3
文書の成立の真否又は手形の提示に関する事実については、申立てにより、当事者本人を尋問することができる。
4
証拠調べの嘱託は、することができない。第百八十六条の規定による調査の嘱託についても、同様とする。
5
前各項の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。
第三百五十三条
原告は、口頭弁論の終結に至るまで、被告の承諾を要しないで、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。
2
訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3
前項の場合には、裁判所は、直ちに、訴訟が通常の手続に移行した旨を記載した書面を被告に送付しなければならない。ただし、第一項の申述が被告の出頭した期日において口頭でされたものであるときは、その送付をすることを要しない。
4
第二項の場合には、手形訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
第三百五十四条
裁判所は、被告が口頭弁論において原告が主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合には、前条第三項の規定による書面の送付前であっても、口頭弁論を終結することができる。
第三百五十五条
請求の全部又は一部が手形訴訟による審理及び裁判をすることができないものであるときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えの全部又は一部を却下することができる。
2
前項の場合において、原告が判決書の送達を受けた日から二週間以内に同項の請求について通常の手続により訴えを提起したときは、第百四十七条の規定の適用については、その訴えの提起は、前の訴えの提起の時にしたものとみなす。
第三百五十六条
手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第一項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない。
第三百五十七条
手形訴訟の終局判決に対しては、訴えを却下した判決を除き、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
第三百五十八条
異議を申し立てる権利は、その申立て前に限り、放棄することができる。
第三百五十九条
異議が不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、異議を却下することができる。
第三百六十条
異議は、通常の手続による第一審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
2
異議の取下げは、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
3
第二百六十一条第三項から第五項まで、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、異議の取下げについて準用する。
第三百六十一条
適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。
第三百六十二条
前条の規定によってすべき判決が手形訴訟の判決と符合するときは、裁判所は、手形訴訟の判決を認可しなければならない。ただし、手形訴訟の判決の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
2
前項の規定により手形訴訟の判決を認可する場合を除き、前条の規定によってすべき判決においては、手形訴訟の判決を取り消さなければならない。
第三百六十三条
異議を却下し、又は手形訴訟においてした訴訟費用の負担の裁判を認可する場合には、裁判所は、異議の申立てがあった後の訴訟費用の負担について裁判をしなければならない。
2
第二百五十八条第四項の規定は、手形訴訟の判決に対し適法な異議の申立てがあった場合について準用する。
第三百六十四条
控訴裁判所は、異議を不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。
第三百六十五条
第二百七十五条第二項後段の規定により提起があったものとみなされる訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、同項前段の申立ての際にしなければならない。
第三百六十六条
第三百九十五条又は第三百九十八条第一項(第四百二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により提起があったものとみなされる訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、支払督促の申立ての際にしなければならない。
2
第三百九十一条第一項の規定による仮執行の宣言があったときは、前項の申述は、なかったものとみなす。
第三百六十七条
小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴えについては、小切手訴訟による審理及び裁判を求めることができる。
2
第三百五十条第二項及び第三百五十一条から前条までの規定は、小切手訴訟に関して準用する。
第六編 少額訴訟に関する特則
第三百六十八条
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2
少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3
前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。
第三百六十九条
少額訴訟においては、反訴を提起することができない。
第三百七十条
少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
2
当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。
第三百七十一条
証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。
第三百七十二条
証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。
2
証人又は当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序でする。
3
裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、証人を尋問することができる。
第三百七十三条
被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
2
訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3
次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
一
第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
二
第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
三
公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
四
少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
4
前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5
訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
第三百七十四条
判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。
2
前項の場合には、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる。この場合においては、第二百五十四条第二項及び第二百五十五条の規定を準用する。
第三百七十五条
裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。
2
前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3
前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第三百七十六条
請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
2
第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
第三百七十七条
少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。
第三百七十八条
少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
2
第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。
第三百七十九条
適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。
2
第三百六十二条、第三百六十三条、第三百六十九条、第三百七十二条第二項及び第三百七十五条の規定は、前項の審理及び裁判について準用する。
第三百八十条
第三百七十八条第二項において準用する第三百五十九条又は前条第一項の規定によってした終局判決に対しては、控訴をすることができない。
2
第三百二十七条の規定は、前項の終局判決について準用する。
第三百八十一条
少額訴訟による審理及び裁判を求めた者が第三百六十八条第三項の回数について虚偽の届出をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3
第百八十九条の規定は、第一項の規定による過料の裁判について準用する。
第七編 督促手続
第一章 総則
第三百八十二条
金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
第三百八十三条
支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
2
次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立ては、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。
一
事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもの
当該事務所又は営業所の所在地
二
手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求
手形又は小切手の支払地
第三百八十四条
支払督促の申立てには、その性質に反しない限り、訴えに関する規定を準用する。
第三百八十五条
支払督促の申立てが第三百八十二条若しくは第三百八十三条の規定に違反するとき、又は申立ての趣旨から請求に理由がないことが明らかなときは、その申立てを却下しなければならない。請求の一部につき支払督促を発することができない場合におけるその一部についても、同様とする。
2
前項の規定による処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
3
前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
4
前項の異議の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第三百八十六条
支払督促は、債務者を審尋しないで発する。
2
債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる。
第三百八十七条
支払督促には、次に掲げる事項を記載し、かつ、債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは債権者の申立てにより仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。
第三百八十八条
支払督促は、債務者に送達しなければならない。
2
支払督促の効力は、債務者に送達された時に生ずる。
3
債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、その旨を債権者に通知しなければならない。この場合において、債権者が通知を受けた日から二月の不変期間内にその申出に係る場所以外の送達をすべき場所の申出をしないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなす。
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